とびひ
とびひとは
「とびひ」の正式な疾患名は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といいます。
細菌が皮膚に感染することで起こる疾患で、火事の火の粉がパッと周囲に飛び散るように、あっという間に全身へ症状が広がっていく様子から「とびひ」と呼ばれています。
特に、肌のバリア機能がまだ未熟なお子様に多く見られるのが特徴です。
とびひの原因
とびひの主な原因は、「黄色ブドウ球菌」や「化膿レンサ球菌」といった細菌です。
これらの菌は健康な皮膚には侵入しにくいのですが、虫刺されやあせも、湿疹などを掻きこわした傷口、あるいは転んだときの擦り傷などから皮膚の内部に入り込み、毒素を出して増殖します。
その菌が付着した手で体の他の部位を触ることで、次々と新しい症状が連鎖してしまいます。
とびひの治療方法
とびひ(伝染性膿痂疹)を治すための基本的なアプローチは、原因となっている細菌をしっかりと退治する「抗菌薬(抗生物質)」を用いた治療となります。
症状が比較的軽い段階であれば、1日に数回、抗菌薬の塗り薬(外用薬)を使用します。お薬を塗る際のポイントは、まず患部をシャワーなどで優しく洗って清潔な状態にしてから、薄く伸ばすように塗布することです。とびひは、患部を触った手で別の場所を触ることで次々と症状が広がってしまうため、お薬を塗った後はできる限り清潔なガーゼで覆って保護してください。また、傷口がジュクジュクと湿って浸出液が出ている期間は、ご家族への感染などを防ぐため、湯船への入浴やプールに入ることは控えるようお願いいたします。
症状が中等症以上に進行している場合や、体の広範囲に広がっている場合は、塗り薬でのケアに加えて、抗菌薬の飲み薬(内服薬)を併用して体の内側からも細菌を抑え込みます。この飲み薬による治療では、ご自身の判断で途中でやめたりせず、医師の指示通りに「決められた量」を「決められた日数分」最後までしっかりと飲み切ることが何よりも重要です。
とびひが完治するまでの治療期間は、炎症の重症度や治療方法によって個人差がありますが、順調にいけば概ね1〜2週間ほどで快方に向かいます。しかし、受診が遅れたり、自己判断で不適切な処置を続けたりすると、一気に悪化して治癒までに長い時間がかかってしまうことがあります。さらにごく稀ではありますが、とびひの原因菌が引き金となって、急性糸球体腎炎といった重篤な腎臓の合併症を引き起こすリスクもゼロではありません。そのため、単なる虫刺されや湿疹と放置せず、早めに皮膚科を受診して適切な治療をスタートさせることが非常に大切です。
予防・日常のケア
とびひは非常に感染力が強いため、ご家庭での適切なケアが重要です。
患部を清潔に保つ
石鹸をよく泡立て、患部を優しく洗い流して細菌の数を減らすことが大切です。洗った後は、シャワーでしっかりと流してください。
タオルや衣類の共有を避ける
タオルを介して他の家族にうつる可能性があるため、タオルの共有は厳禁です。また、衣類や寝具もこまめに洗濯し、清潔な状態を保ちましょう。
爪を短く切る
患部を掻いて症状を広げないよう、お子様の爪は短く、滑らかに整えておきましょう。
とびひはうつる?
とびひ(伝染性膿痂疹)は、その名の通り周囲の人に「うつる」皮膚の病気です。主な原因は、黄色ブドウ球菌や溶連菌(溶血性連鎖球菌)といった細菌が皮膚に感染することであり、人から人への「接触感染」によって広がっていきます。具体的な感染ルートとしては、主に次のようなものが挙げられます。
患部との直接接触
とびひができている部分に直接手で触れてしまうと、細菌が指先に付着し、そのまま自分の体の別の場所を掻いたり、他のお友達やご家族に触れたりすることで次々と感染が拡大します。そのため、症状が治まるまでは、プール遊びや学校での水泳の授業はお休みしていただくようお願いしております。
患部からの分泌物との接触
とびひ特有の水ぶくれの中の液体や、皮が破れてジュクジュクした部分(びらん)から滲み出る浸出液には、原因となる細菌が大量に潜んでいます。この分泌液にうっかり触れてしまうだけでも、細菌がうつる危険性があります。
共有物からの感染
直接肌と肌が触れ合わなくても、患者様が使ったバスタオル、手拭きタオル、おもちゃ、衣服などの「物を介した間接的な接触」によって感染してしまうケースも非常に多く見られます。
小さなお子様は、大人に比べて皮膚のバリア機能や免疫力がまだ十分に発達しておらず、無意識に患部を掻きむしってしまったり、手を洗わずに様々なものを触ったりしがちです。そのため、とびひにかかりやすいだけでなく、集団生活の中であっという間に周囲へうつしてしまう傾向が高くなります。とびひの感染を未然に防ぐためには、外遊びの後のこまめな手洗いを徹底し、毎日の入浴で皮膚を常に清潔な状態に保つことが何よりの予防策となります。
また、すでにとびひを発症してしまった場合には、とにかく「患部を触らない・掻かない」ことを心がけ、ご家庭内でのタオルや衣服の使い回しは絶対に避けてください。ご兄弟やご家族など、身近に人がいる環境下では、これ以上感染の輪を広げないための細心の注意と配慮が求められます。
もし、ご家族や周囲の方の皮膚に「とびひかもしれない」と思われる水ぶくれやジュクジュクした症状を見つけた際は、できるだけ直接の接触を避け、あっという間に全身に広がる前に、少しでも早く皮膚科をご受診ください。
