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円形脱毛症

円形脱毛症について

円形脱毛症は、何の前触れもなく突然、頭の毛が円形や楕円形に抜け落ちてしまう疾患です。その名称が示す通り、局所的に髪の毛が脱落し、丸く地肌が露出した状態になります。

現代の医学では、髪の毛を作る毛包組織を標的としてしまう「自己免疫疾患」の一つと考えられています。本来なら体を守るはずの自身の免疫システムが、何らかのエラーによって自分の毛根を異物とみなし、攻撃してしまうことで発症に至ります。

この病気は年齢や性別に関係なく誰にでも起こり得るものですが、とりわけ10代後半から20代といった若年層での発症が多く報告されています。また、アトピー性皮膚炎や甲状腺の病気など、他のアレルギー疾患や自己免疫疾患を併発している患者様も珍しくありません。

放置していても自然に髪の毛が生えてきて治るケースもありますが、逆に脱毛範囲が広がってしまったり、一度治っても再発を繰り返したりするケースもあるため、気づいた段階で早めに適切な治療を開始することが重要です。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症を引き起こす明確なメカニズムは完全には解明されていませんが、前述の通り自己免疫疾患の一種であるという説が最も有力です。

私たちの体には、外部から侵入してきたウイルスや細菌などの外敵を攻撃して排除する「免疫」という防御システムが備わっています。しかし、円形脱毛症の患者様の場合、このシステムが何らかの理由で暴走し、正常な自分の毛根を誤って攻撃してしまうことで髪が抜け落ちると考えられています。

発症のきっかけ(誘因)として、過労やウイルス感染、ワクチン接種、出産、あるいは心身への強いストレスといった環境的要因が関わっているケースもありますが、特定の思い当たる誘因が全くないまま突然発症することも多々あります。

具体的な要因として推測されているものは以下の通りです。

遺伝的要因

ご家族や血縁者に円形脱毛症を経験した方がいるケースも見られるため、遺伝的な体質が関係していると考えられています。

ストレス

精神的な大きなショックや持続的な強いストレスは、自律神経や免疫システムのバランスを崩壊させ、発症の引き金になる可能性があります。

ホルモンバランスの乱れ

女性において、妊娠や出産、更年期といったホルモンバランスが急激に変化するタイミングで発症しやすくなる傾向があります。

アレルギー

アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質をお持ちの方は、そうでない方に比べて円形脱毛症を発症するリスクが高いとされています。

ウイルス感染

風邪やインフルエンザなどのありふれたウイルス感染症にかかった後、それが引き金となって円形脱毛症を発症したという報告も存在します。

合併症

円形脱毛症の患者様は、甲状腺疾患、尋常性白斑、膠原病、1型糖尿病といった他の疾患を合併しやすいことが知られています。そのため、当院では必要に応じて血液検査等を実施し、隠れた病気がないかを確認します。

円形脱毛症の治療

治療の方針は、毛が抜けている範囲の広さや進行のスピード、さらには患者様のご年齢や全体的な健康状態を総合的に考慮して決定いたします。

代表的な治療方法として、当院では以下のようなアプローチを行っております(※一部、他施設への紹介となる治療も含まれます)。

ステロイド外用薬

患部の過剰な免疫反応(炎症)を抑え、毛髪の再生を促す塗り薬です。脱毛している部分に直接塗布する、最も一般的な治療法の一つです。

カルプロニウム塩化物(フロジン)外用

頭皮の血流を良くして発毛を促し、脱毛斑を縮小させる効果が期待できる保険適用の塗り薬です。副作用が非常に少なく、長期間でも安全に使用できるお薬です。

免疫療法

あえてかぶれを起こす特殊な薬剤を頭皮に塗り、別の免疫反応を起こさせることで、毛根への攻撃をそらして発毛を促す治療です。こちらは保険適用外であり、強いかゆみなどの副作用を伴うため当院では実施しておりません。難治性でご希望の患者様には、対応可能な大学病院等をご紹介いたします。

エキシマライト療法

特定の波長を持つ紫外線を脱毛斑に照射し、毛根を攻撃している異常な免疫反応を抑え込んで発毛を促す光線治療です。

ステロイド局所注射

炎症を強力に抑えるステロイド剤(ケナコルトなど)を、脱毛している皮膚のすぐ下に直接注射します。およそ1ヶ月に1回の頻度で行います。発毛効果が非常に高い反面、注射時の強い痛みや、打ちすぎると皮膚が凹む(萎縮する)といった副作用があるため、小さなお子様には実施しておりません。

ステロイド静脈注射

脱毛が急速に全身へ広がるような重症例に対して、点滴で大量のステロイドを一気に投与する「ステロイドパルス療法」です。副作用のリスクを管理するために入院設備が必要となるため、対応可能な総合病院等での治療となります。

内服薬

炎症を抑えたり血流を改善したりする目的で、グリチルリチンやセファランチンといった飲み薬を補助的に処方することがあります。

経口JAK阻害薬

頭部全体の広範囲に及ぶ重症の円形脱毛症に対して、2022年に新たに保険適用となった飲み薬です。発症の元となる「サイトカイン」の働きをブロックし、免疫細胞が毛包を攻撃するのを防ぎます。ただし、全身の免疫を抑える強い作用があることや、薬価が非常に高額であることから、導入には慎重な判断が求められます。ご希望の際は、処方可能な指定施設をご紹介いたします。

生活指導

日々のストレスをうまく発散し、規則正しい生活リズムを整えることで、体の内側から症状の改善を後押しします。

これらの治療を症状に合わせて単独、あるいは複数組み合わせて行うことで、多くの患者様に毛髪の回復が見られます。ただし、発毛を実感するまでの効果や期間には個人差が大きく、完治までに根気と時間が必要なケースも珍しくありません。 また、円形脱毛症は一度治っても再び毛が抜けてしまう(再発)ことが多い疾患ですので、毛が生え揃った後も定期的に経過を見守ることが重要です。

円形脱毛症の予防・日常のケア

円形脱毛症は発症のメカニズムが完全に解明されていないため、「これをすれば絶対に防げる」という確実な予防法は存在しません。しかし、日々の生活習慣を見直し、以下のポイントに気をつけることで、発症や再発のリスクを抑えることは可能です。

ストレスを溜めない

過度なストレスは発症の大きな引き金となります。趣味の時間を楽しむ、適度な運動をするなど、ご自身に合ったリラックス方法でこまめにストレスを発散させましょう。

バランスの取れた食事

健やかな髪の毛を育てるためには、栄養バランスの整った食事が不可欠です。髪の主成分となる良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルを豊富に含む食材を日々の食事に積極的に取り入れてください。

十分な睡眠

慢性的な睡眠不足は免疫システムの誤作動を招きやすくなります。毎日しっかりと質の良い睡眠をとり、その日の疲れをリセットするよう心がけてください。

頭皮のマッサージ

頭皮の血の巡りを良くし、毛根へしっかりと栄養を届けるために、シャンプーの際などに指の腹を使って優しく頭皮マッサージを行う習慣をつけましょう。

紫外線対策

強い紫外線を頭皮に直接浴び続けると、ダメージが蓄積して発症リスクが高まる恐れがあります。日差しが強い時期の外出時は、帽子や日傘を活用して頭皮を保護してください。

禁煙

タバコは血管を収縮させて血行不良を引き起こすため、髪の成長にとって大きなマイナス要因となります。髪と頭皮の健康のためにも禁煙をおすすめします。

こうした日常のケアに加え、普段から鏡で頭皮の状態をチェックし、「抜け毛が急に増えた」「地肌が見える部分がある」など少しでも異変を感じた際は、迷わず早めに皮膚科を受診してください。

女性の円形脱毛症の原因

女性が発症する円形脱毛症には、男女共通の要因(自己免疫やストレスなど)に加え、女性の身体ならではの特有な要因が深く関与していると考えられています。

とりわけ、女性ホルモンの劇的な変動はヘアサイクル(毛髪の成長周期)に多大な影響を及ぼします。妊娠中や出産後、あるいは更年期といったホルモンバランスが大きく揺れ動くライフステージにおいては、円形脱毛症を発症するリスクが高まる傾向にあります。

また、男性と比較して、過度なダイエットによる栄養不足や、頻繁なヘアカラー・パーマによる頭皮へのケミカルダメージなど、髪や頭皮に負担をかける習慣を持つ方が多いことも、発症リスクを押し上げる一因と見られています。

さらに、周囲の視線に敏感になりやすかったり、多様な役割を求められて心理的負担を抱えやすかったりといった、女性ならではの精神的・社会的ストレスも無視できない要因です。

女性の円形脱毛症の引き金となり得る具体的な要因には、以下のようなものが挙げられます。

妊娠・出産

妊娠期間中は女性ホルモンが多く分泌されますが、出産を終えると一気に減少します。この急激なホルモンバランスの急降下が、抜け毛や円形脱毛症のきっかけになることがよくあります。

更年期

更年期を迎えると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下し、ホルモンバランスが崩れやすくなります。この更年期特有の体調変化の一環として、円形脱毛症が現れることがあります。

ダイエット

食事制限を伴う過酷なダイエットは、髪を作るための栄養素を枯渇させます。さらに、思うように痩せないストレスや空腹のストレスが重なることで、脱毛のリスクが跳ね上がります。

ヘアカラー・パーマ

カラー剤やパーマ液などの強い化学薬品は、頭皮に炎症を起こさせ、毛根にダメージを与える可能性があります。短期間での繰り返しの施術は、頭皮環境を悪化させる原因になります。

ストレス

現代の女性は、仕事での責任、家事、育児、複雑な人間関係など、多方面からストレスを受けやすい環境にあります。これらの蓄積されたストレスが免疫力を低下させ、円形脱毛症を誘発することがあります。

これらの様々な要因が一つ、あるいは複数複雑に絡み合うことで、女性の円形脱毛症が引き起こされると考えられています。

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